深くしゃがめない——それはハイロックス前の大事なサインです
結論からお伝えします。両手を上げたまま、かかとを浮かせずに深くしゃがめない場合、その状態でハイロックス(HYROX)の種目練習に入るのはおすすめしません。この「深くしゃがむ」動きは、トレーニングの世界ではディープスクワットと呼ばれ、ウォールボール(ボールを壁の的に投げて受け止める種目)・ランジ・スレッドプッシュ(重いそりを押す種目)・ローイング(ボートを漕ぐ動きのマシン)に共通する「しゃがんで力を受け止める」土台になっています。
この記事では、理学療法士が使う評価法(FMS:ファンクショナルムーブメントスクリーン)をベースにした自宅でできるセルフチェックの手順と、できない場合の原因パターン、最初にやるべきことを解説します。所要時間は1分です。
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なぜハイロックスの前に「深くしゃがめるか」なのか
ハイロックスの8種目のうち、少なくとも4つはディープスクワットの質がそのまま出ます。
- ウォールボール——壁の的に投げたボールをキャッチするたびに、深くしゃがんで衝撃を受け止める動きを繰り返します
- ランジ——片脚ずつ深く沈む動きは、しゃがみ込みの片脚版です
- スレッドプッシュ——重いそりを押すこの種目では、低い姿勢を保ったまま、足の裏で地面を押し続けます
- ローイング——ボートを漕ぐように、1回ごとの引く動作で、深く曲げた股関節から力を引き出します
つまり、深くしゃがめない体のままレースに出ると、この4種目すべてでどこか別の場所(多くは腰や膝)が代わりに働かされることになります。疲労がたまる後半ほど、そのツケは大きくなります。
1分セルフチェック——両手を上げてしゃがめますか?
理学療法士などの専門家が使う評価法FMS(Cookらが2006年に発表した、動きの質を見る7つのテスト)の第1項目「ディープスクワット」を、自宅向けに簡略化した手順です。
- 裸足で立ち、足を肩幅に開く(つま先はやや外向きでOK)
- 両手をまっすぐ上げて「バンザイ」の姿勢をとる
- そのまま、ゆっくりお尻が膝より低くなるまでしゃがむ
- 3秒キープして、立ち上がる
かかとが床についたまま、腰が丸まらず、腕が前に倒れずにしゃがめていればOKです。動きが怖い方は、お尻の真下あたりの床に座布団やクッションを敷いて行ってください。万が一後ろに尻もちをついても安心です。
チェックポイント:骨盤が「後ろに倒れて」いませんか
一番見てほしいのは骨盤の向きです。深くしゃがんだとき、骨盤がまっすぐ立った状態(正中位)を保てているか。多くの方は、しゃがみ込む途中で骨盤が後ろに倒れ(後傾)、腰が丸まってしまいます。お尻が「クルン」と下に巻き込まれる感覚があれば、それです。
あわせて、次のサインもチェックしてください。
- かかとが浮く
- 膝が内側に入る
- 上げた腕が前に倒れてくる
- 後ろにバランスを崩しそうになる
スマホで真横から動画を撮ると、自分では気づけない癖がよく見えます。
できない原因は、大きく3つに分かれます
① 足首の硬さ
足首が硬いと深くしゃがむ途中でかかとが浮き、バランスを取るために腰が丸まります。しゃがみ込みの土台は、実は足元から始まっています。
② 股関節の硬さ・筋肉のバランス
股関節が深く曲がらない、あるいは股関節まわりの筋肉のバランスが崩れていると、足りない分を骨盤の後傾で補うことになります。
③ 下部体幹の安定性・固定性の低下
お腹まわりの深い部分で骨盤を支える力(下部体幹の安定性)が落ちていると、しゃがみの深さに耐えられず、姿勢が崩れます。
厄介なのは、どの原因かは人によって違い、複数が重なっていることも多いという点です。原因が違えば、やるべき練習も変わります。
できなかった人が、まずやるべきこと
最初の一歩は、フォームを意識してもう一度やってみることです。「かかとに体重を残す」「胸を張ったまま」「お尻を後ろに引いてから沈む」——この3つを意識するだけで変わる方もいます。
意識しても難しい場合は、自己流で繰り返すよりも、一度専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。上に書いたとおり原因は人によって違うので、自分の原因がどれなのかを特定することが、遠回りに見えて一番の近道です。
そして何より——できないまま無視して、重りを担いだ練習に進まないでください。しゃがむ動きで痛みや違和感がある場合は放置せず、医療機関の受診をご検討ください。
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ハイロックスという競技の全体像と種目別のリスクはこちらの記事、大会までの練習メニューと6ヶ月ロードマップは練習方法の記事をご覧ください。料金は料金ページにあります。
よくある質問
深くしゃがむとかかとが浮くのはなぜですか?
多くの場合、足首の硬さが関係しています。足首が深く曲がらない分、かかとを浮かせてバランスを取ろうとするためです。ただし股関節や体幹の問題が重なっていることもあり、原因の特定には専門家のチェックが確実です。
しゃがめないままハイロックスに出たらどうなりますか?
出場自体は可能ですが、ウォールボールやランジなどで腰や膝が代わりに負担を受けやすくなります。特に疲労がたまるレース後半はフォームが崩れやすいため、まず土台を整えてからの参加をおすすめします。
毎日しゃがむ練習をすれば、できるようになりますか?
原因が足首・股関節・体幹のどれかによって、必要な練習は変わります。原因に合わない反復は改善が遅いだけでなく、代償動作の癖を強めることもあります。回数より「自分の原因に合った練習」が優先です。
FMSとは何ですか?
FMS(ファンクショナルムーブメントスクリーン)は、2006年にCookらが発表した、7つの基本動作から動きの質を評価する方法です。ディープスクワットはその第1項目にあたります。動きの癖や左右の偏りを見つけるための評価であり、これ単独でケガを予測できるものではない点は、公平にお伝えしておきます。
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参考文献:Cook G, Burton L, Hoogenboom B. Pre-participation screening: The use of fundamental movements as an assessment of function – Part 1. N Am J Sports Phys Ther. 2006;1(2):62-72.
※ハイロックス(HYROX)はHYROX社の商標です。当店はハイロックスの公式ジム・提携施設ではなく、本記事は一般的な情報提供と体づくりの解説を目的としています。
監修:高任良知(理学療法士) しゃがめないことは、恥ずかしいことではなく「体からのサイン」です。違和感を無視して無理を重ねないこと——それが大会を最後まで楽しむための、最初のトレーニングです。/本記事は理学療法士としての臨床経験と公開文献に基づく一般的な情報提供であり、効果を保証するものではありません。

